幼児教育こそ、国をつくる力がある 幸せな未来をつくるのが私の仕事

学校法人みんなのひろば ふじようちえん 理事長・園長 加藤 積一 さん
1979年/社会学部社会学科卒業

  • 2017年1月13日 掲載
  • 取組み
  • 卒業生紹介

今、内外を問わず、教育・建築・デザインなどで一番注目されている幼稚園「ふじようちえん」を運営する加藤積一さん。自由な発想と行動力で、幼児教育、待機児童解消や小学校設立など、挑戦を続けています。

日々の遊びの中にこそ子どもの育ちと学びがある

東京都立川市の国営昭和記念公園の北側、住宅地と畑が点在し、武蔵野の面影を残す自然豊かなところに「ふじようちえん」はあります。ふじようちえんの教育理念は、「幸せな未来をつくること」。幸せな未来をつくる人を育てることによって、この理念が達成されると信じています。

ふじようちえんの魂の真ん中には、20世紀初頭、イタリアのマリア・モンテッソーリ女史によって考案された教育法、モンテッソーリ教育の心があります。子どもは自ら育つ力を持っていることを前提に、気付きや自主性、知的好奇心などを科学的に見て、育むことを大切にしています。子どもたちは、遊びの中から自ら、見て、触れて、感じて、考えて、行動につなげ、五感を洗練させながら、自ら育つ力を発揮する方法で理解を深めていきます。

例えば、トイレの入り口には足形のテンプレートが貼ってあります。子どもの育ちの中にある秩序感、その芽生えに呼応して、同じ形のものを合わせたがる特性を利用しています。そしてスリッパをそろえることで、達成感、満足感を味わい、それがやがて自信になり、自信がたくさん集まって、自立していくものなのです。

園庭にある水場には、流し台をあえて取り付けていません。水を流しっぱなしにしたり、必要以上に流したりすると、下の砂利に水がはねて自分の足が濡れるようにしているのです。人間、自分の足が濡れると蛇口を閉めるもので、節水にも貢献しています。

また園庭の表面はあえてデコボコにしていて、子どもが走ると転ぶようにしてあります。1回転んだ子は、学習して次は転ばないようにするものです。こうして自ら危険を察知する力や体幹も鍛えられるのです。なんでもオートマチックになってしまっている現代は、子どもが育つにはものの道理を理解しにくい時代であるともいえます。そこで少し昔の少し不便な日本の状況をあえてつくり出し、「不便が工夫を生み、工夫することで子どもは育つ!」として、「懐かしい未来、Nostalgic Future!」と言っています。

折り紙・ぬり絵などの遊びを通じて、きちんとすることを培ってきた人たちがつくった社会こそが、真面目で勤勉な日本社会であり、「幼児教育こそ、国をつくる力がある」と思っています。

中国などに招かれて、ふじようちえんの取り組みについて講演し、幼児教育の大切さを伝えている

ふじようちえんにある「自由と進取」の学風

私は、法政一高から大学までの7年間、法政で学びました。大学では社会学部で、さまざまな社会事象の本質などを学びました。法政大学で過ごし、学んできた精神が「ふじようちえん」の理念にも生かされています。法政には「自由な学風」と「進取の気象」という言葉があります。最近改めて、「自由と進取の精神」を大切にしている自分がいて、「法政との出会いこそわが人生」と感じています。

大学卒業後、政治家秘書、食品会社勤務を経て、自分の会社を立ち上げました。どうしたら売れるのかと悩むこともあり、大学で学んだ社会学的考察を実社会で活用することもしました。

そんな時、父の経営する立川藤幼稚園(当時)のバスの運転手さんがインフルエンザにかかり、1週間ほど私が代理で運転をしました。いざ幼稚園を去ろうとしたとき、子どもたちが私の脚にまとわり付き、「遊ぼう! 遊ぼう!」と言ってきたのです。この時「お金よりもっともっと大切なもの」があることを実感しました。まさに「灯台下暗し」でしたね。

幼児教育からの子どもの可能性をつなぐ小学校

2007年に現在の園舎に建て替えました。建て替えるに当たって、アートデレクターの佐藤可士和さんと建築家の手塚貴晴・由比ご夫妻に出会い、ご協力を頂きました。佐藤さんが「園舎は巨大な遊具」としたコンセプトを、私は「園舎は、子どもが育つための道具」と理解し、手塚さんが具体的な設計をしました。学び、状況、建築という三者のデザインが結び付いたプロジェクトでした。

おかげで、文部科学大臣表彰受賞・OECD/CELE学校施設好事例最優秀賞、キッズデザイン賞金賞など、多くの評価を頂きました。

現在、学校法人みんなのひろばとして、ふじようちえん、保育所スマイルエッグス、託児所スマイルキッズで約750人、小学生英語で約300人、1日約1000人の子どもたちが育っています。待機児童対策にも力を入れ、2018年4月には定員120人の「なすびほいくえん」も開設予定です。

さらに、子どもたちのさまざまな可能性をその先にもつなげたいと考え、小学校設立に向けて動き始めました。ふじようちえんで育った子どもたちが、次のステージでも同じ理念の下で学べる場です。また『ふじようちえんのひみつ』という書籍を発行したり、国内外あちこちで講演をさせていただいていて、世界中の子どもが仲良くなって「幸せな未来」に1ミリでも近づけるような種まきを、これからも続けていきたいと思っています。

法政大学の在学生の皆さん、とにかく一歩前に足を出さない限り、向こう岸にはたどり着けません。成功するかどうかを考える前に、まず動くことです。皆さんのご活躍、ご家族、ご友人、そして多くの法政大学の皆様と共に応援しています。

2007年に竣工した園舎の屋上はトラックフィールドになっていて、園児たちの活動の場の一つになっている


初出:広報誌『法政』2016年度11・12月号

加藤 積一(かとう せきいち)さん

1957年東京生まれ。1979年法政大学社会学部社会学科卒業。商社勤務、会社経営などを経て、1992年藤幼稚園に入社。2000年に園長に就任。現在、NPO法人全国元気まちづくり機構理事、私立幼稚園経営者懇談会会員も務める。

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