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【法政大学総長対談】「ダイバーシティ&インクルージョン」プラス「思いやりの心」で、世界で活躍できる人材に

法政大学総長 田中 優子

ブルッキングス研究所 シニア・ファイナンシャルマネージャー
根本 亜紀 さん (2001年 法政大学 法学部卒業)

  • 2017年1月13日 掲載
  • 取組み
  • 卒業生紹介

現在、米国のブルッキングス研究所のシニア・ファイナンシャルマネージャーとして、グローバル経済開発プログラムの中で最大規模の予算をもつ、ユニバーサル教育センターの財務管理の仕事に就く根本さん。

大学卒業と同時に渡米し、結婚・育児生活をしながら、仕事を通して専門的なスキルを磨き、さらに大学院でMBAを取得し、着実にキャリアを積んできました。日本人が自らの特性を活かしながら、国際的な組織の中でどう生き抜いていくのか。根本さんに熱く語っていただきました。

「就社」から「就職」という意識でキャリアアップを目指すアメリカ社会

田中 根本さんは、大学卒業と同時に渡米され、現在もワシントン.D.C.で生活していらっしゃいますね。

根本 渡米して15年余りになりますが、現在は「ブルッキングス研究所」というシンクタンクで、財務管理の仕事に就き、主に研究プロジェクトの予算編成・管理のほか、契約業務などを担当しています。

田中 法律の知識も会計の知識も必要になるお仕事だと思いますが、どのように勉強して現在の職に就かれたのでしょう。

根本 渡米と同時に結婚・育児生活をスタートさせたのですが、渡米してしばらくした後、英国新聞社「The Independent」のワシントン事務所にてオフィスマネージャーの職を得ました。大学時代から関心を寄せていた自分なりの社会問題についてお話ししたところ、その場で採用されました。前任者も日本人で高く評価されており、日本人への信頼が厚かったようです。2008年のリーマンショックの余波を受け、辞職を余儀なくされたのですが、こちらでのキャリアが評価され、JICA(国際協力機構)に移ることができました。そこで、経理財務、研究援助の業務に携わることで、現在の仕事で必要とされるスキルを実践的に学びました。

田中 「就社」という意識ではなく、まさに専門的な職に就いて、必要な能力を磨いてきたということですね。だからこそそうした能力が次のステップでも認められる。理想的なキャリアアップですね。

根本 アメリカでは一般的なキャリアアップの道筋だと思います。能力を上げる目的で、自らの選択で学校に行って勉強するなど、仕事以外の時間でも、自分に付加価値をつける努力をしています。職場ではスタッフが積極的に新たな提言をするなどプラスアルファの仕事をし続け、それが認められて昇進につながることも多くあります。努力した成果が認められるのでやりがいがあります。しかし言いかえると、受け身の姿勢では評価されませんから、常に自分の付加価値を高め、示していく必要があります。

田中 その主張のしかた、日本人は苦手ですね。

根本 そうかもしれません。しかし日本人ならではの良さもあると思っています。日本人は正面衝突を避ける傾向があり、それが功を奏して、穏便に事を纏められることも多々あります。アメリカでは多くの人が自分を主張することを貫きますから、時に激しい衝突もあり、それを機に離職を余儀なくされることもあるようです。

田中 日本人はいかに衝突せずに良い関係を築くかを常に考えている、その点については長けているかもしれません。

根本 私もブルッキングス入所直後は、「もっと自分の意見を主張するように。」と言われていました。しかし、私の仕事は本来、研究者たちのサポートをすることです。マニュアル通りに仕事をすればいいのではなく、それぞれ好みや考え方が違う研究者たちにとって、もっとも仕事がしやすい環境づくりをサポートする必要があります。そこで緻密なコミュニケーションが大切でした。そうしたやり取りの中で、相手の立場、相手が置かれた状況等を加味しつつ、自分の意見を主張した上で、ウイン・ウインの状況を作ることを心がけてきました。

田中 相手をきちんと立てながら、というのがポイントですね。

根本 相手との良い関係が築ければ、遠慮せずに本心を話してくれるようになります。また、こちらの言い分にも耳を傾けてもらえるようになり、困難な事態に陥る前に対策を練ることもでき、信頼につながります。

中高時代の関心を一層高めることができた法政大学での良き恩師との出会い

田中 根本さんは法政大学女子高等学校から法政大学の法学部政治学科に進学されましたが、当時から海外への関心は高かったのですか?

根本 私が海外に関心を持つようになったのは、実家が米軍基地に近い場所にあり、小学校高学年から英会話を習うようになってからだと思います。アメリカ人との交流が多く、日米間の問題はもちろん、さまざまな国際問題に関心を持つようになり、中高からよく本を読んでいました。そして大学では政治を勉強しようと、政治学科を選びました。在学中は、生命科学、国際協力、地域研究、特にイスラエルとパレスチナなどの講義を熱心に受講しました。特に印象に残っているのは、保坂嘉恵美先生(現在は国際文化学部教授)の英語の授業です。受講前から厳しい先生だとお聞きしていましたが、私はチャレンジ精神が豊富な性格なので、喜んで受講しました。さすが、学生への期待も高かったのですが、先生からのフィードバックはそれを上回るものでした。それを先生は一人ひとりの学生にしてくださいました。入学当時、私の英語レベルは外国の方々と苦なく会話ができる程度だったのですが、在学中、保坂先生の下で4年間にわたり欧米諸国の文化背景、タイム誌等の英文読解を詳しく学べたことが、私のアメリカでのキャリア設計に大きく寄与していると思います。現職では英語によるコミュニケーションはできて当たり前で、それだけでは評価してもらえません。研究者の業務記述書の加筆・修正や法務顧問との高度のやり取り等も求められます。そのような仕事に今就けているのも、先生の授業のお陰だと思っています。

田中 法政大学には学生の期待に応える、熱心な先生がたくさんいます。また、実務経験のある教員が多いのも特徴です。

根本 そうですね。私が興味を持った授業も、外で弁護士や難民支援などにあたる実務家教員の方々によるものでした。学生時代の私にとって、授業で学んでいることが社会でどのように応用されるのか、考えるきっかけにもなりました。

田中 社会で活躍している方は、リアルな社会を教室まで持ってきてくれます。これはメリットが大きいと思っています。また、こうして根本さんをはじめ多様な卒業生の皆さんがそれぞれお持ちになっている社会での経験を大学にフィードバックしてくださるのも大変ありがたいと感謝しています。

根本 充実した学びに触れ、大学でそれまでの関心をさらに高めることができたと思います。

田中 そうした関心をさらに追及するために、大学院への進学は考えなかったのですか?

根本 実は、当初は大学院へ進学するか、外務省に入省したいと考えていたのですが、学生時代に運命的な出会いがあり、卒業後渡米することになったのです。当時日本で知り合ったパートナーがアメリカ国籍の方で、アメリカ帰国にあわせ私も渡米したという経緯があります。

国内の様々な社会問題にも目を向けられるグローバル人材を

田中 最近の学生を見ていると、在学中に留学したり、休学して経験を積んだりすることで、将来の自分の仕事を選ぶ人が増えていると感じています。根本さんは在学時代には海外経験がなく、いきなり海外での生活を選ばれたわけですが、不安などはありませんでしたか?

根本 在学中は、「日本人であるからには、まずは日本文化や日本語をしっかりと身に付けるべき」という父の方針もあり、日本の大学をまずは卒業しようという気持ちで学んでいました。日本人として、確固たる日本への理解、知識を持ち、母国語できちんと会話し、考え、勉強する力を身に付けて欲しいと、父からは言われて育ちました。
2001年に卒業後、縁あって渡米した際、当初は3年ほどでまた日本へ戻る予定でしたから、帰国後に自分の夢にチャレンジすればいいと軽く考えていました。しかし、2001年9月のテロでパートナーが日本に戻ることができなくなり、さらに渡米後3年でパートナーが中東に赴任となり、子どもと2人の生活を余儀なくされるという事態に。それを機に、アメリカにおける仕事と大学での学びをスタートさせました。育児だけではきっと悶々としていたと思います。

田中 根本さんは、アメリカにいながらも、日本人という根をもって暮らしているのですね。大学は今グローバル化しています。キャンパスに留学生も増え、ダイバーシティという概念を法政大学でも大切にしています。留学生にはもちろん、日本人学生に対しても、日本語や日本文化をどうやって身に付けてもらうか、それが大学にとって新たな課題になっているのです。

根本 日本に帰国すると、日本が弱者に住みにくい社会になっているような印象を受けます。ダイバーシティという概念を超えて、今後インクルージョンという考えが必要になります。私たちの職場でも「ダイバーシティ&インクルージョン」をスローガンにしています。これからの日本社会も、いかにインクルージョンしていくか、つまり、多様な人々が対等に関わりあいながら包括された社会をつくるかを考えられる人材が求められるのではないでしょうか。海外へ目を向けるのも大切ですが、日本が抱える問題にも目を向ける必要があると思います。

田中 少子高齢化に伴う諸問題や格差、環境問題など、日本は今たくさんの問題を抱えています。そうした問題を直視し、問題意識を持った上で海外に行って学び、それを日本に還元するという姿勢が今後多くの若者に求められますね。

根本 アメリカ社会ではこれまで以上に、軍事力、経済力などのハードパワーだけではなく、文化や教育といったソフトパワーの価値を認めるようになっています。最初にお話しした、日本人ならではのソフトパワーともいうべき、場をうまくまとめる力や、思いやりを持って相手に接する姿勢はこれからも世界で高く評価されるでしょう。目の前の人を一人の人として尊重することは、ダイバーシティ以前の問題として重要視されています。

田中 日本の大学ではようやくダイバーシティを意識するようになりましたが、そうしたソフトパワーや、インクルージョンという概念についても今後意識しなければなりませんね。本日はありがとうございました。とても参考になりました。


HOSEI ONLINE(http://www.yomiuri.co.jp/adv/hosei/)から転載

根本 亜紀(ねもと あき)さん

ブルッキングス研究所 シニア・ファイナンシャルマネージャー
1978年神奈川生まれ。2001年法政大学法学部政治学科卒業。

2001年夏に渡米後、英国新聞社The Independentのワシントン支部にてオフィスマネージャーとして勤務。その後、JICAアメリカ事務所にて経理、財務管理、契約、緊急援助業務等を担当。JICA在職中にウェブスター大学ウオーカー・スクール・オブ・ビジネス・アンド・テクノロジーに入学、政府調達に関わる学問を重点的に学び、2014年5月にMBAを取得。2013年よりブルッキングス研究所に勤務。2016年現在、同研究所のシニア・ファイナンシャルマネージャーとして、グローバル経済開発プログラム予算最大規模のユニバーサル教育センターの財務管理の仕事に就きながら、バージニア大学にて会計学の勉強をしている。

【参考】ブルッキングス研究所 The Brookings Institution (https://www.brookings.edu/

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