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地元の力と外部の力の融合で 被災地に新たな風を呼ぶ

NPO法人SET代表、陸前高田市議会議員 三井 俊介 さん
2012年/法学部国際政治学科卒業

  • 2017年3月1日 掲載
  • 取組み
  • 卒業生紹介

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市広田町で復興支援を続ける三井俊介さん。東京などから若者を呼び込むことで、地域に新たな活力を生み出しています。


課題解決のアクションを起こす 1週間の滞在プログラム

岩手県陸前高田市の広田町で活動しているNPO法人・SET(セット)の代表を務めています。他の三陸沿岸の地域と同じように、広田町も東日本大震災で大きな被害を受けました。広田町の復興のため、地元の方と外部の若者をつなぎ合わせて新しい働き方、新しい生き方を創り出していく。これがSETの基本的なビジョンです。

SETが広田町に初めて入ったのは、2011年4月。支援物資の仕分けなどから活動を始めたのですが、地元の方から「これだけつらい時期に、これだけ笑って活動できたのは、お前らがいてくれたおかげだ」と言ってもらえて。それは、うれしかったですね。 それから、広田町で採れる野菜を「浜野菜」としてブランディングして通信販売する「おすそわけ便」、お年寄りのためのパソコン教室など、SETでさまざまな活動を行ってきました。

そして今、力を入れているのがチェンジメーカースタディプログラム(CMSP)です。これは、東京などから大学生に広田町に来てもらい、田舎暮らしを体験しながら町の課題解決のためのアイデアを考え、1週間の滞在期間中に具体的な行動にまでつなげるという、実践型の地域おこし担い手育成プログラムです。

最終日に実践したことを地元の方に報告するのですが、ある方からこんなことを言われたことがあります。「これまでも町が変わらなくてはならないと思っていたが、いつも誰かのせいにしていた。でも君たちの姿を見て、自分が変わらないと町は変わらないと気付いた」と。この方は、SETの活動をずっと応援してくれています。

並行してSETでは、中学や高校の民泊修学旅行の誘致も行っており、今年の6月には千葉県の中学校が修学旅行で広田町を訪れました。10月には2校目が来ることになっています。

こうした活動を通じて自然に恵まれた広田の魅力を地元の人にも外部の人にも知ってもらい、UターンやIターンで広田に住む人を増やしていきたい。これが、私の思いです。実際、CMSPに参加した大学生のうち3人が来春から広田に移住する予定です。

昨年9月には、陸前高田市の市議会議員になりました。移住・定住したい人を育てる活動をSETで行い、移住してきた人たちへの環境整備を市議として行っていきたいと考えています。地元の力と外の力を融合させて、広田に新しい風を吹かせていきます。


自然あふれる町で 午前にウニ獲り、午後に仕事

東京などで会社勤めをしているとオンとオフの時間がはっきりしていますが、広田町での今の暮らしは仕事とプライベートの時間がそれほど明確に分かれていません。それが心地いいんです。

昨年、漁業権を取得して、小さな船を持ち始めました。午前中は海に出てウニやアワビを獲り、午後はSETの仕事をする。こうした一日を送ることもあります。海に出るのは市議やSETとしての仕事ではありませんが、漁師の方と話をして地域のことを知るのは仕事に通じている面もあります。

昨年は子どもが生まれたので、面倒を見たり、買い物に行ったり。ちなみに、妻もSETのメンバーで東京からの移住者です。

SETの総会の集合写真。前列右端はCMSP担当の岡田勝太さん(2015年法卒)の姿も


できない理由を挙げずにできる方法を探す

私の活動の原点は、法政の学生時代にあります。法学部国際政治学科を選んだのは、単純に海外に興味があったから。特に、英オックスフォード大学への短期研修が必修科目になっていることが決め手になりました。

しかし、授業で話を聞いたり、映像を見たりして海外のいろいろな問題を知るにつれて、単なる海外への興味から国際協力に関心を持つようになったんです。そして2年生のとき、他大学の有志と一緒にWorldFutという団体を立ち上げました。

これは、主催するフットサル大会の参加費やオリジナルで作ったボールの売り上げを使って、サッカー選手を目指すカンボジアの子どもたちを支援する団体です。

このWorldFutに力を入れていた3年生の春に東日本大震災が起こり、復興支援のために立ち上げたSETの活動に重心を移すことになります。

国際政治学科で勉強し、カンボジアへの国際協力をしていたのに、なぜ日本の広田町で活動するようになったのかと聞かれることがあります。これはゼミの恩師・後藤一美先生の教えで、「インターナショナルは国と国の問題になるが、グローバルは地球上なら地域を問わない」と。支援先がたまたま途上国ではなく、広田町になったということです。大学で勉強したことは今の活動にも非常に生きています。

SETでは見ず知らずの土地に移住しての活動で何度か大きな壁にぶつかりましたが、心に留めてきたのは「できるかできないかではなく、やるかやらないか」。できない理由はいくらでも挙げられますが、やると覚悟を決めたらできる方法を探し求めるものです。皆さんも、やりたいことがあったらぜひ実際にトライしてみてください。

World Futで建設したカンボジアのグラウンドにて

三井 俊介 Shunsuke Mitsui

1988年茨城県生まれ。法学部国際政治学科卒業。在学中に学生団体WorldFutを創設して代表に就任。カンボジアへの国際協力活動を行う。同じく在学中の2011年3月、復興支援団体SETを設立。同年6月に同団体をNPO法人化し、現在に至るまで、代表として岩手県陸前高田市広田町の復興支援に携わる。2015年9月に陸前高田市議会議員選挙に当選し、市議としても地域の復興に尽力している。

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