• ホーム
  • 研究
  • 地域の持続的成長を願って 産業クラスターの形成にまい進

地域の持続的成長を願って 産業クラスターの形成にまい進

  • 2017年12月25日 掲載
  • 教員紹介

地域の人たちや企業と積極的に関わり合い、地域経済を活性化させるための研究を続ける金藤正直准教授。
成長のカギとなる産業クラスターの形成を模索しながら、実践的な取り組みを続けています。

地域と力を合わせ課題を解決し、サステイナビリティを高める

経営学と会計学の観点から、地域の持続的成長を可能にするようなマネジメント手法を研究しています。その一つが、複数の組織が連携するネットワークを作り、地域に新たな価値を創出するシステム(産業クラスター)の形成と運用の探究です。

地域の活性化をけん引するのは、その地域における産業の成長です。業種や組織の壁を越えて企業が他の企業などと連携し合うことができれば、一つの企業では対応しきれない事業展開も可能になります。それぞれの企業で安定した収益を得られるようになれば、相乗的に経済効果が上がり、雇用が生み出されて若い世代へとつながっていきます。経済的にも社会的にも、好循環を生み出すビジネスモデルの実現が、地域のサステイナビリティ(持続可能性)を高めるカギになると考えています。

現在、働きかけを進めている対象地域は、北海道の十勝地域、静岡県の富士宮市、栃木県全域、新潟県新潟市、熊本県県南地域の5エリアです。

農業が盛んなこれらの地域では、「フードバレー」と呼ばれる取り組みが進んでいます。フードバレーは、コンピューター関連産業の集積地として有名な米国の「シリコンバレー」に由来し、食を中心に複数の関連産業が集積したビジネスモデルを構築しようとする構想です。日本には食の安全や健康に関心の高い人が多いので、現在はこれを意識した新しい展開を考えているところです。

ただ、各地域で状況や解決すべき課題が異なるため、画一的な方策を見つけるのは難しいですね。さらに、熱意を持って継続的に取り組んでくれるリーダー役が見つかりづらいことも課題です。町おこし政策として自治体のトップが長くリーダーシップを発揮してくれることが望ましいですが、どこでもそうなるとは限りません。

道のりは平たんではありませんが、方向性は間違っていないと信じているので、地域の方々と一緒に力を合わせて取り組みたいと考えています。

チームごとのさまざまな観点から、社会課題解決を探るゼミ活動

人間環境学部では、学部独自のスタイルとして、A、Bの二つの研究会(ゼミナール)を運営しています。研究会Aは、2年次あるいは3年次から4年次まで継続して履修するゼミです。もう一方の研究会Bは、2年次、3年次、4年次が履修できる単年度のゼミです。

私のゼミでは、AとBのどちらも、同じテーマの研究を手掛けていますが、研究への関わり方は大きく異なります。じっくり取り組める研究会A(Aゼミ)は、研究の対象地域と内容は自由で、学生たちの主体性を尊重しています。

また、研究会B(Bゼミ)は、経営学と会計学の基礎的な知識や研究・調査の方法論を網羅的に学び、成果に直結させるため、研究の対象地域やテーマを指定しています。今年度は、昨年度から続けている、ぶどう栽培からワイン製造・販売までを町営で事業展開する北海道池田町に加えて、りんご栽培からジュース・ジャムなどの製造・販売までを町営で事業展開する青森県板柳町と、新たな日本酒の開発・生産・販売の可能性とともに、清酒産業の活性化の方法も検討している新潟県を研究対象地域に選びました。

事業を継続し発展させるには、利益を生み出し続けることが重要です。そこに軸足を置きながら、持続的成長を妨げる課題はどこにあるのか、どうすれば解決できるのかを探ります。

学生たちはチームに分かれ、それぞれが商品企画やマーケティング、広報など、企業の一部門を担うように役割を分担しています。チームごとに異なる視点から、ワイン、りんご、清酒の各産業を活性化させるための課題を浮き彫りにして、解決に向けてのプラン構築に取り組みました。

立場が異なれば視点は変わり、その人たちが連携することで、さまざまな効果や課題が生じる。それを実践的に体験しながら、次のステップへつなげてほしいと思っています。

授業への参加を促しながら、双方向で刺激し合い学びを深める

法政の教壇に立つようになって4年目ですが、私が発想しないような面白いアイデアを出してくる学生もいて、いい刺激を受けています。

授業スタイルも、法政に来て大きく変わりました。当初はスライドの内容を一方的に説明していましたが、これでは学びを深めることができないという感想が上がったのです。そこから試行錯誤し、学生たちも授業に積極的に参加できるようなスタイルに少しずつ変えました。今は、10~20分程度説明したら、学生たちに問いかけて発言を促すというように、双方向で授業を進めています。その結果、私の「実践知」につながる気付きを、学生からも得られています。

時間を掛けて信頼を築き、地域を活性化するロールモデルの構築を目指す

地域経済に関する研究を始めたのは、大学院博士課程の修了間際に文部科学省のバイオマス(※1)活用プロジェクトに参加する機会に恵まれたことがきっかけです。環境に優しいエネルギーを作り出すためのバイオマス資源を活用するには、第一次産業、とりわけ農業に関わる方々の協力が不可欠なので、現地調査も兼ねて各地を訪れるようになりました。地域産業の実態を知るうちに、産業クラスターに興味を持ち、今の研究へとつながっています。

多くの地域では、農林漁業従事者の高齢化と後継者不足に苦しみ、地域産業の衰退を憂えている現状があります。政府も地域産業を活性化する政策として、6次産業化(※2)などを進めていますが、問題がないわけではありません。今まで第1次産業に従事してきた人たちにとって、営業はまったく異なる役割です。仮に生産や加工はできても、販売まではできないと二の足を踏む人が多いのが実情でした。

しかも、保守性の強い地方では変化を好まない傾向があり、懐疑的になりがちです。コミュニティが出来上がっているところに、「よそ者」が入ってきて、新しい取り組みに関する話をしても、なかなか信用されません。それが、毎回酒の席に加わって語り合ううちに、徐々に本気かもしれないと信用されるようになります。時間を掛けて、信頼関係を築くことが重要です。

日本における産業クラスターの形成は、まだ試行錯誤の段階です。地域によって、考え方も直面している課題も異なります。それぞれの問題を解決するプランを模索しながらも、将来的には、地域産業の活性化に役立つ汎用的なビジネスモデルを構築していきたいと考えています。

※1 バイオマス

再生可能な、生物由来の有機性資源(石油などの化石資源は除く)。その種類は、家畜の排泄物や食品廃棄物などの廃棄物から、建築廃材などの未利用資源、資源用に栽培された作物など、多岐にわたる。

※2 6次産業化

「1次産業」を営む農林漁業者が、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも一貫して携わることで、生産物の相乗価値を高め、地域経済を豊かにしようとする取り組み。「6次産業」とは、1次産業、2次産業、3次産業をかけ合わせた値(1×2×3=6)を示す造語。

2016年にはドイツのニーダーゼクセン州にあるロイファナ大学リューネブルクで開催された環境管理会計の学会に、共同研究者と共に出席。研究に関する見分を深めた

金藤 正直 准教授

人間環境学部 人間環境学科

1974年広島県生まれ。

横浜国立大学大学院国際社会科学研究科企業システム専攻博士後期課程修了。東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻産学官連携研究員を経て、弘前大学人文学部の専任講師、准教授を歴任。2014年4月から人間環境学部人間環境学科准教授。現在に至る。地域の人たちと積極的に関わり合うフィールドワークを駆使しながら、研究に精力的に取り組んでいる。

ページトップへ