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人の言葉から能楽の謡まであらゆる音の正体を解析

情報科学部ディジタルメディア学科  
伊藤克亘 教授

  • 2018年10月25日 掲載
  • 教員紹介

音声認識などの言語メディア研究の先駆者として、まい進してきた伊藤克亘教授。能楽の謡(うたい)のデジタル解析に挑むなど研究対象を音全般に広げ、なお力強く歩み続けています。

音研究の先駆者として人がやらない研究に挑戦

音や言語メディアに関する研究を手掛けています。

研究の原点は、自然言語(人間が意思疎通のために使用する言葉)処理の研究からです。人間が会話で発した言葉を、コンピューターで言語解析する研究に取り組む音声認識技術や音声対話システムの開発は、学生時代から深く関わってきました。

先端技術の開発に苦労は付きものです。当時は、スーパーコンピューターを扱うなど、限られた環境でしか研究をすることはできませんでした。有効な仕組みを考えついても、解析用の音声データを保存する場所と、高速処理のできるコンピューターがない環境では、検証実験もできなかったのです。さらにデータ量の多い音楽の研究などは、やりたくても大変困難であると見なされていました。

時代を経て、処理速度も上がり、扱えるデータ量も増え、ネットワーク環境も高速化したことで、音声認識研究は実用化に向けて大きく前進しました。音声データはサーバーに蓄積し、ネットワークを介して瞬時に解析データをやり取りするなど、私の学生時代には考えられない環境の進歩に驚いています。

研究に取り組む姿勢として、未開発の分野で新しい枠組みを生み出すことに、意義を感じています。

人があまりやらない分野の研究は試行錯誤の連続ですが、自由な発想でチャレンジできます。音声認識技術に携わったきっかけも、当時は手掛ける人が少ない研究分野だったからです。

今では音声のみならず、音楽も含む音全般へと研究対象は広がりました。研究室では、学生たちの発案により「アニメーション声優の音声変換」や「オーケストラ用の楽譜を小編成のアンサンブル用に自動変換するシステム」など、ユニークな研究にも取り組んでいます。

多彩な研究分野を持つ法政の利を生かし謡を解析

近年の新たな取り組みとしては、法政大学の関連施設でもある「野上記念法政大学能楽研究所(以下、能楽研究所)」の方々にご協力いただき、能楽の謡(うたい)をデジタル解析する研究を進めています。

音を解析するには、対象の音源を録音して、コンピューター内に取り込むことでデータ化します。音の存在は見えませんが、データになった音は音声波形などのグラフで可視化できますし、一部を抽出するなど、さまざまな分析に展開できるのです。

能楽の謡には、メロディーを楽譜に書き起こすだけでは伝わらない、独特の節回しがあります。しかも、同じ曲でも流派によって、声を震わせるビブラートや音の強調、抑揚などのニュアンスが違うため、聞き慣れない人には難解に感じる音楽でしょう。

そこで謡のメロディー部分を推定した上で、どのような表現が加えられているのか、視覚的に明らかにすることを試みています(図)。こうしたアプローチが伝統芸能を客観的に理解するきっかけとなり、能楽研究が進む基盤になれたらと願っています。

法政大学は15の学部と大学院に加え、研究施設も数多くあります。しかし、研究や学びの場で、それらを横断して交流する機会が少ないことを、常々もったいないと感じていました。今やIT(情報技術)は誰もが利用する技術ですし、互いに協力し合えば、より有意義な研究や学問ができそうな気がしています。

今回、研究への協力を仰ぐかたちで能楽研究所とのつながりができたことは、横の関係づくりの第一歩だと思っています。これを機に、多方面につながりを広げていきたいですね。

日本の未来を担う技術者を育成していきたい

情報科学の知識が生かせる企業は数多くあります。特に電機メーカーとは関係が深く、大学で技術を学んだ学生が社会に出て活躍することで、産業の発展を担ってきました。

しかし近年、電機メーカーは人材確保に苦戦している様子が見受けられます。このままでは、社会をけん引する技術者の数が足らなくなるのではないかと危機感を覚え、質の高い技術者の育成が急務だと感じています。

学生たちを見ていると、遠慮がちな姿勢に歯がゆく思うこともありますが、目標を見据えて本気でやればできる潜在能力は備えていると思います。彼ら、彼女らが、社会に出て活躍できる人材となれるよう、背中を押していきたいと考えています。

学生が手掛けた自動編曲プログラムにより、 歌、キーボード、サックス、バイオリン、ベ ースなど変則的なバンドの楽譜を作成。情 報科学部内で開催したクリスマス会で披露 した

伊藤克亘 教授

情報科学部ディジタルメディア学科

1965年大阪生まれ。東京工業大学工学部情報工学科卒業後、同大学院理工学研究科情報工学専攻 博士後期修了。博士(工学)。電子技術総合研究所(後の独立行政法人産業技術総合研究所)にて主任研究員として勤務した後、名古屋大学大学院情報科学研究科の助教授に。2008年から本学情報科学部教授に着任。現在に至る。

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