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国際性と学際性(デザイン工学部システムデザイン学科 小林 尚登 教授)

  • 2020年10月9日 掲載
  • 教員紹介

2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

小林尚登教授は、「第12回日本ロボット学会功労賞」(一般社団法人日本ロボット学会)を受賞しました。

受賞内容「RO-MANの運営に対する貢献」

背景

昨年9月、日本ロボット学会より第12回ロボット学会功労賞(RO-MANの運営に関する貢献)を授与されました。法政大学と繋がりもあることでしたので大学に報告するとともに、この場をお借りし、経緯とその思いを伝えさせて頂きたいと存じます。

私の専門は、制御工学およびロボット工学という工学分野です。この世界で生きている人間は職人気質の男性研究者が多いようで、そういう私を含めたこの分野の研究者は、より進化したロボット(知能機械)を研究開発しようと日々努力をし、より進化したロボット(知能機械)は人間社会において「善」であると妄信していたのです。つまりそのロボット(知能機械)が人間社会にどのような影響をあたえるかなどということは、全く考えていなかったのでした。

しかしある時、このような「高度なロボット(知能機械)」と「人間」の関係は、さらに熟慮する必要があるのではないかと思うようになり、尊敬する先輩方と取り留めのない雑談をした際に、その必要性を確信しました。そこで、その先輩方と4人で新しい研究分野を作ろうということになったのでした。そして、その中でも最年少の私がこの新しい分野の国際会議をスタートさせることになった、それが今から約30年前の1990年代の初めのことでした。

RO-MANという国際会議

ロボット工学は、機械工学、電子工学、計算工学などを総合した工学分野で、工学者を集めることは、工学分野の私には容易なことでしたが、工学以外の研究者を集めて国際会議を開くということはとても難関な事でした。多様な分野の研究者にその必要性やコンセプトを理解して賛同して頂き、一堂に会して議論をする機会を設けるという目的のために、1991年から孤軍奮闘してまいりました。電子メールも普及していない時代でしたのでエアーメールをたくさん郵送した記憶があります。資金の面では日本の7つの財団から資金援助を頂き、世界的に著名な研究者数名と、特に音楽(Computer Music) や心理学の分野の研究者を招聘することができ、法政大学からは、多摩キャンパスにある百周年記念館の貸与と国際会議開催支援助成を受けました。また学会の支援も必要でしたので、アメリカ拠点の世界最大の学術団体IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)と日本ロボット学会等の国内学会の共催という形式に整えることができました。RO-MAN という略称は、私が会議のテーマである Robot and Human Interactive Communication から名付けました。 因みに現在の正式名称は IEEE International Conference on Robot and Human Interactive Communication です。

このようにして「国際性」と「学際性」を目指す会議として、現在まで毎年開催しておりますが、最初の10数年は『多様な分野の研究者が一堂に会して人間社会とロボット(知能機械)の在り方を議論する』という目標からはほど遠いものでした。その後、状況は徐々に好転し、教育学、認知科学等の多くの優秀な研究者、特に女性の非工学分野の研究者が数多く積極的に参加して下さるようになり、2017年にはニューヨークで25周年記念大会を開催することができました。2020年はイタリアのナポリで開催する予定でしたが、パンデミックのためにオンライン開催となってしまいました。

「RO-MAN'92」ポスター

「学際性」と「国際性」そして「無知の知」

このRO-MANという国際会議は、まだまだ生育途中でコンセプトも揺らぎがちですので、常任の運営委員会を作って長期運営方針を常に議論しております。この国際会議を通じて、いろいろな方と話をさせて頂き、私が強く感じたことがあります。それは研究分野にはそれぞれの「独特の文化」があり、その「独特の文化」は「世界共通のもの」「宇宙で普遍なもの」であると、各分野の多くの研究者達は信じて疑わないということでした。これは、私自身も深く反省した点であり、現在も常に戒めている点です。専攻分野が「外国の人々にとって興味を持たないドメスティックな領域」さらに「他分野とコラボレーションしても殆ど意味のない領域」である研究者の方には特にこの傾向が強いように思います。日本の大学の学部を考えても、このような学問領域を主体とする学部を思い起こすことができるのではないでしょうか。

そのような分野で育つと「自分の文化こそが宇宙」という考えが無意識の中に存在しているようです。あるいは、違う文化の存在に否定的であったり、そこの人々に想いを馳せることも苦手であったりするようです。日本社会や組織を仕切るマネジメントトップの方々にもこの傾向が強い方がいる気がします。

私は「学際性」と「国際性」をもったRO-MANという国際会議の運営を通して、自分の立ち位置を再認識することができ「無知の知」を得ることができたことに心から感謝しております。

多摩キャンパス百周年記念館で行われた「RO-MAN'92」の様子

法政大学デザイン工学部システムデザイン学科

小林 尚登 教授(Kobayashi Hisato)

1984年より法政大学に勤務、現在デザイン工学部教授。この間、法政大学アメリカ研究所(米国カリフォルニア州非営利財団)を設立し初代所長(2000-2002)。法政大学デザイン工学部初代学部長(2007-2008)。日本学術会議連携会員、日本学術振興会・学術システム研究センター専門研究員、計測自動制御学会副会長等を歴任。IEEE Life Fellow。IEEE International Conference on Robot and Human interactive Communication常設運営委員会委員長。


※所属・役職は、記事掲載時点の情報です。


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