• ホーム
  • 研究
  • 大規模な分散システムの国際的な研究(理工学部創生科学科 滝沢 誠 教授)

大規模な分散システムの国際的な研究(理工学部創生科学科 滝沢 誠 教授)

  • 2020年10月9日 掲載
  • 教員紹介

2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

滝沢誠教授は、「TCDP Awards【2019 Outstanding Service Award】」(IEEE Computer Society Technical Committee on Distributed Processing (IEEE TCDP) )を受賞しました。

業績「分散処理分野の進歩に貢献」

分散システムは、複数のコンピュータ上のプロセスが互いにネットワークでメッセージ通信を行いながら、ある目的を達成するように協調動作を行うシステムで、現在の情報システムは分散型となっています。プロセス(process)とは、コンピュータの処理単位で、プログラムの実行状態を示します。近年は、クラウドコンピューティングシステムのように情報システムは大規模化し、IoT (Internet of Things)では、コンピュータのみならずメガネ、衣類、車等の種々の「もの」がネットワークで相互接続され、数百万台から数十億台の情報機器から構成されるようになっています。こうした情報システムでは、コンピュータ、データベース等の計算資源をどのように管理するかが問題となります。クラウドコンピューティングシステムでは、サーバ、クライアント等の資源が何処にあり、誰がどのように利用できるか等は、企業等の組織体により集中的に管理されています。これに対して、システム内のコンピュータ等の各構成要素が自律的(autonomous)に管理を行う分散型のP2P(Peer-to-Peer)モデルが、大規模なシステムでの性能、信頼性、安全性、管理面の優位性が指摘され、Skype、Blockchain等で利用されてきています。筆者は、一貫して分散型のモデルの研究を1970年代から行ってきています。こうした情報システムの大規模化に伴い、効率的な通信と処理方法等の研究が種々行われてきていますが、システム全体で消費される電力も増大してきています。情報システムで消費される電力を低減するために、Intel、Qualcomm等で低消費電力CPU等のハードウェア、アーキテクチャが開発され、サーバ、PC、スマホ等で利用されています。こうしたハードウェア志向の方法論に対して、筆者の研究室では、ソフトウェアの観点に立ったマクロレベル方法論を新たに提案しています。サーバ等の情報機器では、プログラムによりハードウェアが動作され、CPU等の各ハードウェア要素で電力が消費されます。これらのハードウェア要素から合成的にシステム全体の消費電力を考えることは困難です。このために、各種のコンピュータで種々のプログラムを実行したときに、「コンピュータ全体」で消費される電力を実測し、実測データを解析することにより、プログラムを実行したときのコンピュータの消費電力を与える電力消費モデルを考案しました。本モデルは、プログラムを実行したときのコンピュータ全体の消費電力を与えるはじめての形式モデルで海外でも高い評価を受けてきています。本モデルに基づいて、利用者の要求を処理する低消費電力コンピュータを見つけるアルゴリズム、仮想機械(virtual machine)の移行(migration)機構を用いて、あるコンピュータで実行中のプログラムを、より電力を消費しないコンピュータに移行させるアルゴリズム等を研究しています。

2013年に本学に赴任してからは、情報システムで消費される電力をソフトウエアの観点で低減するための研究を中心に研究室の院生、学部4年生と行ってきています。研究成果は、2013年以降、IEEE等の国際論文誌IEEE SJ、TIE、TII等に60件、IEEE AINA等の国際会議で210件の論文として発表し、国際会議NBiS等では4件のBest Paper賞も受賞しています。スペイン、スイス、ドイツ、ポーランド等の海外の研究者とも共同研究を行い、留学生の院生とともに国際的に研究を行っています。これらの研究を基に、2013年の法政大学に赴任以降で4名(海外3名)の博士を出しています。来年3月で定年となりますが、今年度はコロナ感染防止のため、研究室の院生、学部4年生と、オンラインで打ち合わせ、実験等を海外の研究者も含めて行いながら研究を進めています。国際会議も対面形式での開催がなく、院生、学部生も海外に出張できず残念なのですが、Zoomを使ってオンラインでの発表等が体験でき、有意義な経験ができています。

昨年2019年7月に、IEEE Computer Societyの Technical Committee on Distributed Systems (TCDP)から、outstanding service awardを受賞しました。TCDPは、IEEEのComputer Societyの中で、コンピュータネットワーク、分散システム、IOT、これらの応用についての研究会です。TCDPのもとで、ICDCS (International Conference on Distributed Computing Systems)、ICNP(International Conference on Network Protocols)等の国際会議を主催してきています。この中で、ICDCSは、本分野のプレステージの国際会議で、論文採択率も2割以下の最難関国際会議です。私はこれまでに5件の論文が採択され、またICDCS-1998 (Amsterdam、1998)でprogram chair、ICDCS-2002 (Vienna, 2002)でgeneral chairを務めました。また、ネットワーク分野のvice program chair、workshop char等を数多く歴任し、ICDCSの高レベルな論文の採択に貢献してきました。また、IEEE TCDP主催の国際会議AINA(Advanced Information Networking and Applications)を創設し、ICPADS等の国際会議のprogram chair、general chairを行ってきました。また、IEEE Computer Societyは約十万人の会員からなるコンピュータ関係の国際学会で、IEEEでも最大規模です。2003年から2008年まで2期にわたり、IEEE Computer SocietyのBoG (Board of Governors)のメンバーに選挙で選出され、学会の運営も国際的に行なってきました。IEEEでのこうした業績が評価され、今回の受賞となりました。本賞は、TCDPでも数人が受賞しているだけで、日本人としては初の受賞でもあります。

良い研究を行ない、論文を作成し、論文誌、国際会議に投稿し、査読を受け採録され、発表を行うことは研究者として重要なことです。論文が採録され発表することは名誉なことでうれしいことです。これからの若い研究者には、論文発表だけに満足せずに、論文を査読する立場、さらに国際会議を主催していく立場として国際的な研究グループを主導していくという志をもって研究活動を行ってほしいと思っています。このためには、研究レベルが国際的に高く評価されるものであることが何よりもまず重要ですが、これに加えて、英語力はもちろんですが、異なった文化、伝統、歴史等を理解する教養と、人間力を身に着け魅力的な人間になることが重要だと思っています。

「2019 IEEE Computer Society TCDP (Technical Committee on Distributed Processing) Outstanding Service Award」表彰盾

法政大学理工学部創生科学科

滝沢 誠 教授(Takizawa Makoto)

東北大学工学部応用物理学科卒業(1973)、修士課程修了(1975)。2013年から本学理工学部創生科学科教授。Keele大学(英)、GMD(独)客員教授。情報処理学会理事等を歴任し、フェロー。IEEE Computer SocietyのBoard of Governors。IEEE AINA等でBest Paper賞多数受賞。


※所属・役職は、記事掲載時点の情報です。

ページトップへ