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木造住宅「木のカタマリに住む」「未来のまちに贈る家」(デザイン工学部建築学科 網野 禎昭 教授/宮田 雄二郎 特任・任期付講師)

  • 2020年11月13日 掲載
  • 教員紹介

2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

網野禎昭教授・宮田 雄二郎特任・任期付講師は、下記の通り受賞しました。

「ウッドデザイン賞2019 ソーシャルデザイン部門入賞」(ウッドデザイン賞運営事務局※)
作品「木のカタマリに住む」

「ウッドデザイン賞2019 ハートブルデザイン部門優秀賞(林野庁長官賞)」(ウッドデザイン賞運営事務局※)
「きらりと光る北の建築賞2019 優秀賞」(一般社団法人北海道建築士事務所協会札幌支部)
作品「未来のまちに贈る家」

※ウッドデザイン賞運営事務局(特定非営利活動法人活木活木(いきいき)森ネットワーク、公益社団法人国土緑化推進機構、株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所(林野庁補助事業))

               左:宮田雄二郎特任・任期付講師 右:網野禎昭教授

森と社会と木造建築との関係構築

森と社会との関係がだいぶ希薄になっているように思います。森は必要不可欠なものです。気候の安定や土砂の流出防止、動物の営巣など自然環境の保全にとっても、また、水源涵養、薪炭や建材の生産など、私たちの生活にとっても重要な多面的役割を担っています。この森を維持するためには、手入れをし、伐採と植林を繰り返し、樹木の更新をはかってゆく必要があります。その担い手が林業ということになりますが、国産材の活用は思うように進まず、日本の林業は衰退し、伐期の人工林が放置されています。

最近になって国産材活用の意義が見直され、新国立競技場に代表されるように、木を使った大型建築が注目されるようになりました。一般の木造住宅では、標準化された軸組みの工場生産化が進み、経済的で品質管理の行き届いた木造が量産されています。

一見、国産材の活用が充実しつつあるように見えるのですが、このような木造建築の大型化と工業化が進む状況では、流通業と中間加工業の役割が増大する反面、木材の生産者である林業にはなかなかお金が落ちません。ただ単に木材の活用量を増やすだけでは、森と社会の共栄は実現できないようです。実際に、国産材生産量の増加に反比例し、林業収益は減少傾向にあります。私たちは、「木のカタマリに住む」「未来のまちに贈る家」と名付けた2つの住宅の設計施工を通して、森と社会と木造建築の関係を見直してみました。

木のカタマリに住む

「木のカタマリに住む」は、流通している木材を使わずに、製材工場で直接木材を選ぶことから始めました。カタマリに住むという名前のとおり、この住宅では、一般住宅の3倍強の国産材を使いました。通常、日本の木造住宅は、柱と梁を組み合わせた省材料の軸組構造によっており、屋根や床、壁の内部は断熱材や配線を充填する空洞となっていますが、この住宅では、どこもかしこも無垢のスギ製材を並べた厚さ12センチの面で覆われています。組み立て方も、できるだけローテクにこだわり、小さな企業や大工さんなど、だれにでもできるような方法を考えました。無垢の木材を並べるという点ではログハウスも似ていますが、製材を井桁状に横積みするログハウスに対して、この住宅では縦に並べることで、部屋の大きさや間取りを自由に設計できるようにしています。

木造軸組みの建物は、柱や梁として、木の強度を利用していますが、木は、大量に使うことで、「カタマリの効果」として、強度以外にも、断熱性、蓄熱性、調湿性といった快適性に関わる性能をバランスよく発揮します。カタマリの効果は、このような物理的なものばかりではありません。もう一つ、とても重要な効果として、林業の収益を増やし、地域の仕事を作るということがあります。実は、この住宅で使った大量のスギ製材は全て製材工場のデッドストックです。冒頭にも書きましたが、日本の木造は工場生産化が進み、それにつれて木材の品質管理も厳しくなってきました。形の整っていない木材や大きすぎる木材は自動化ラインには入らないということです。また、顧客や工務店も、割れや節、丸みのある木材を敬遠してしまい、その結果、A品と呼ばれる材ばかりが流通し、相当な量のB品が無駄にされています。これを有効に活用することができれば、製材業や林業の収益は改善するはずです。

(2015年4月竣工/静岡県富士宮市/設計:網野、宮田、平成建設/施工:平成建設)

「木のカタマリに住む」内観写真

「木のカタマリに住む」施工写真

未来のまちに贈る家

古希を迎えた施主夫婦のご希望は「年齢を考えると、この家で暮らすのはわずかな間。将来は地域に贈る家を建てたい」。この街で愛され、使い継がれるためには、そこでコミュニティが形成されるにふさわしいデザインと背景を持った建築が必要でした。昨今の空き家問題や住宅の短寿命化に見られるように、個人向けカスタマイズを追求した結果、日本の住宅は汎用性と持続性を失ってしまいました。そこで、地域の産業や文化が育んだ建材である木材を使い、将来の用途によって自由に再デザインできる柔軟性に富んだレイアウトの住宅を設計しました。パブリック空間である1階は、30人以上を収容できる70㎡の無柱空間として、セミナー、コンサートなど、様々な用途に使用できる「ガランドウ」の空間です。施主夫婦のプライベート空間である2階は、撤去可能なブリッジ状の独立架構となっているため、更に汎用性を高めています。

この大きなガランドウをつくるために、15㎝角、長さ6mに製材したトドマツを70㎥使いました。北海道の人工林の5割を占めるトドマツは、白く美しい木肌を持っていますが、水分含有量が多く割れやすいため、主伐期を迎えて太りながらも、下地材や木箱などに使われる以外、建築材としての用途が確立されていません。さらに、北海道というところは、木材を長さ3,65mの一種類にしか製材していないという特徴があります。このような地域性の中で、トドマツの長材を挽くということは挑戦でしたが、地域の林業や製材業と協力して、新しい木の使い方を実現できた点も、未来のまちへの贈り物になったと思っています。

(2017年12月竣工/北海道江部市/設計:網野、宮田、平成建設/施工:新栄工建)

「未来のまちに贈る家」内観写真

法政大学デザイン工学部建築学科

網野 禎昭 教授(Amino Yoshiaki)

1967年静岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京大学大学院修士課程修了。スイス連邦工科大学ローザンヌ校にてMaster in Timber StructuresおよびDr. ès sciences techniques取得。ウィーン工科大学建築学部教員を経て、2010年より本学教授。専門は木造建築、建築生産。


法政大学デザイン工学部建築学科

宮田 雄二郎 特任・任期付講師(Miyata Yujiro)

1976年北海道生まれ。横浜国立大学工学部卒業。横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了。構造設計事務所に勤務。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程社会人コース修了。退社独立後、構造設計事務所を経営。東京大学大学院農学生命科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。農学博士。2018年より本学特任・任期付講師。専門は建築工学、木質材料学。


※所属・役職は、記事掲載時点の情報です。



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