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【HOSEI PHRONESIS】日常生活の中にAIを取り入れるシステムづくりにまい進

情報科学部コンピュータ科学科
黄 潤和(ファン ルンヘ) 教授

  • 2022年6月23日 掲載
  • 教員紹介

情報科学部に創設時から携わり、人工知能(AI)研究を続けている黄潤和教授。
AIや情報技術の活用を通じて、便利で快適な生活に役立つ仕組みづくりに取り組んでいます。

専門家の代わりをしてくれるシステムづくり

情報通信や知能情報学などのコンピュータサイエンスを専門に、人工知能(AI)の研究に取り組んでいます。中でも、重点的に手掛けているのは「エキスパートシステム」です。

エキスパートシステムは、特定の分野の専門知識を基に推論を行い、課題解決のためのアドバイスを返してくれるシステムです。言い換えれば、AIを使って専門家(エキスパート)が脳内から答えを導くプロセスを模倣するシステムとなるでしょう。特徴的な構造として、専門的なデータを蓄積した「知識ベース」と、情報を解析して必要な解を取り出すための「推論エンジン」で構成されています。

エキスパートシステムに求められるのは即答力です。解を導くまでに時間がかかり過ぎては、専門家の代わりはできません。膨大なデータの中から、最適な解を効率良く探せるように「推論エンジン」の性能を上げ、データを適切に分類した上で「知識ベース」に蓄積していくことも大切です。
AIの性能を高めるためには、人間の脳の働き、認知機能を理解してコンピュータに投映する必要があります。そのために、認知科学、脳科学、神経科学、心理学など学際的に探究しています。簡単には進まないことばかりですが、やりがいを感じています。

学部のスタートアップに関わり、教育への熱意が高まる

大学では電子工学を学んでいたのですが、当時はまだ珍しかったコンピュータを扱っているうちに、その将来性に興味を引かれてコンピュータサイエンスを学ぶようになりました。

教育者としての第一歩を踏み出すきっかけになったのは、1993年に新設された会津大学コンピュータ理工学部の開学に携わったことです。

当時は英国で博士号を取得したばかりの駆け出しの研究者でしたが、縁あって会津大学の初代学長を務めた故・國井利泰教授に「日本の大学に来てみないか」と声を掛けられました。日本初のコンピュータ理工学専門大学のスターティングメンバーの一員として関われることは、とても貴重な経験と良い機会になると思い、来日しました。

1994年南アフリカ共和国のヨハネスブルグを訪れた際は、国際会議の合間に現地の子どもたちと過ごして癒やされたことが良い思い出に

さらに、2000年に法政大学が情報科学部を創設した際も、初代学部長を務めた大森健児教授に誘われ、立ち上げから携わることになりました。新学部で最年少の研究者だったので緊張しましたが、國井教授も一緒だったので、とても心強く感じていました。

新しいことに取り組もうとする人たちは熱意があり、やる気満々です。教育への情熱が高い方々に囲まれたことは大きな刺激になり、教育者として成長させてもらえたと感じています。

20年以上も法政に在籍しているので、関係者は自分の家族のような気持ちでいます。学生にも、自由な発想で、のびのびと自分のやりたいテーマに取り組んでほしいと考えています。

2018年にギリシャで開催されたIEEEの「Cyber Science and Technology」では、国際会議のパネルディスカッションで議長を務めた実績などを評価された

社会に貢献できるような新しいシステムづくりに意欲

近年は、さまざまな分野で、情報通信技術(ICT)を駆使して操作を自動化する「スマート化」が進み、生活を便利にする仕組みが進化しています。AIは、その仕組みづくりに不可欠な要素になるでしょう。

その一端を担うために、学生と共に数年前から手掛けているのは、センサーAIシステムの研究です。
現在はまだ実験段階ですが、モノの動きを探知するセンサーにより日常的にデータを計測しておくことで、そのデータを基に、AIで異常をいち早く予測する仕組みを構築できるのではないかと考えています。

手始めに、浴室での利用を想定した実験を進めています。浴槽内でのヒートショックやシャワー時の転倒など、浴室では思いがけない事故が起こることがあります。命に関わる危険な事態も考えられるので、異常時は一刻も早く対処しなければいけないでしょう。

しかし、プライバシー保護の観点から、浴室ではカメラによるモニタリングはできません。そこで、センサーを使って心拍、呼吸数など体の状態を計測し、異常を感知する仕組みづくりに取り組んでいます。自動的に救急車を呼んだり、家族に連絡をしたりするなどの連動処理も想定しています。

実用化に至れば、高齢者の見守りや介護現場でのヘルスケア分野だけでなく、目が離せない乳幼児の保育、ペットの世話など、多方面での展開が期待できる「実践知」になるでしょう。

誰もが使えるようにするまでには、まだ多くの実験を繰り返し、データの蓄積と分析力の精度向上が必要です。可能であれば、企業と連携をとるなどしながら研究を深め、実現に向けてまい進したいと考えています。

研究室の雰囲気は明るく、コロナ前には親睦を兼ねてスポーツ大会を催したことも。留学生は家族同伴で、一緒に卓球やバドミントンを楽しんだ

(初出:広報誌『法政』2022年5月号)

情報科学部コンピュータ科学科

黄 潤和 教授(HUANG Runhe)

中国・国防科技大学にて電子工学を学び、理学士を取得。国防科技大学で講師を務めた後、英国に留学し、西イングランド大学にてコンピュータ科学および数学を専攻、博士号を取得(コンピュータサイエンス)。帰国後は1993年に開学された会津大学コンピュータ理工学部の立ち上げに関わり、助教授を務める。2000年本学情報科学部の新設とともに、准教授として着任。2003年より教授に就任。現在に至る。Association for Computing Machinery、IEEEに所属。2019年から2020年までIEEE CIS SWTCの委員長を務める。

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